「看護師はいつでも転職できる」と言われますが、実際の市場はどのくらい売り手優位なのでしょうか。日本看護協会が運営するナースセンターの2024年度集計では、看護職の求人倍率は2.51倍。前年度の2.22倍から上昇し、2015年度(2.68倍)以来、約10年ぶりの高水準となりました。
ただ、平均倍率だけでは自分の転職のしやすさは分かりません。施設の種類によって倍率には大きな差があり、強く人を求めている領域とそうでない領域がはっきり分かれているからです。この記事では、倍率の内訳と推移を確認しながら、売り手市場を焦らず活かすための数字の読み方を整理します。
全体像:求人倍率2.51倍、10年ぶりの高水準
2024年度の都道府県ナースセンターには、求職者68,724人に対して172,522人分の求人が寄せられました。求人倍率は2.51倍で、前年度から0.29ポイント上昇。コロナ禍の2021年度には1.33倍まで下がっていたので、3年間でほぼ倍増した計算です。
内訳を見ると、求職者数が前年度比13.17%減、求人数も1.96%減。つまり「求人が爆発的に増えた」のではなく、「転職市場に出てくる看護師が減っている」ことが倍率を押し上げています。医療・介護の現場全体で人材の取り合いが続いている構図です。
看護職の求人倍率(ナースセンター)
2.51倍
2024年度。前年度2.22倍から上昇し、2015年度以来の高水準
求職者数と求人数(2024年度)
求職68,724人/求人172,522人
求職者は前年度比13.17%減。倍率上昇の主因は求職者の減少
コロナ禍からの倍率推移
1.33倍 → 2.51倍
2021年度の1.33倍から3年でほぼ倍増
施設別の内訳:訪問看護4.54倍、大病院1.93倍
施設種類別の求人倍率は、訪問看護ステーションが4.54倍で最も高く、20〜199床の中小病院が3.00倍、200〜499床の病院が2.49倍、500床以上の大病院が1.93倍でした。規模の小さい職場・在宅系の職場ほど採用に苦戦しており、大病院との差は2倍以上あります。
この差は、転職先の選び方に直結します。訪問看護や中小病院は「経験やブランクに柔軟で、交渉の余地も生まれやすい市場」、大病院は「相対的に競争があり、準備がものを言う市場」と読み替えられるからです。行きたい職場のタイプによって、転職活動の戦い方は変わります。
施設種類別の求人倍率
訪問看護4.54倍/中小病院3.00倍
200〜499床2.49倍・500床以上1.93倍と、規模が大きいほど低い
数字の読み方:売り手市場でも「情報の差」は残る
倍率2.51倍という売り手市場は、裏を返せば「どの求人も人手不足の事情を抱えている」ということでもあります。好条件に見える求人の背景に恒常的な退職があるケースもあれば、堅実に人を育てている職場が地味な求人票を出しているケースもあります。倍率が高いほど、求人票の字面と実態の差を見抜く目が大切になります。
また、看護師の雇用は正規81.8%と安定度が高く(令和6年衛生行政報告例)、慌てて動く必要のある市場ではありません。売り手優位のいまは、じっくり情報収集をして、職場の内部情報や離職率まで確かめてから動ける環境です。「選べる時期だからこそ、急がず選ぶ」が、この市場のいちばん賢い使い方だと言えます。
看護師の正規雇用比率
81.8%
1,115,543人。雇用の安定度が高く、腰を据えた転職活動がしやすい
この記事のまとめ
看護職の求人倍率は2.51倍と約10年ぶりの高水準。ただし主因は求職者の減少で、現場の人材確保競争が続いている。
施設別では訪問看護4.54倍・中小病院3.00倍に対し大病院は1.93倍。行きたい職場のタイプで市場の温度が違うため、戦い方も変えたい。
売り手市場は「急いで動くべき市場」ではなく「じっくり選べる市場」。求人票の字面だけでなく、職場の内部情報まで確かめてから決めるのが賢い使い方。
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