高齢化が進む日本で、医療の提供の場は病院から自宅・地域へと少しずつ移っています。その受け皿である訪問看護は、事業所数・働く人数・求人需要のどれをとっても拡大が続く領域です。全国訪問看護事業協会の調査では、訪問看護ステーションの稼働数は2025年4月時点で18,743件となり、15年連続で増加しました。
一方で、拡大期の業界には新規開設と廃止が同時に増えるという揺らぎもあります。この記事では、訪問看護の需要拡大を示すデータと、実際に職場として選ぶときに見ておきたいポイントを整理します。「病棟の外で、一人ひとりとじっくり向き合いたい」と考えている人の判断材料になれば幸いです。
拡大の実態:ステーション18,743件・働く看護師9.1万人
全国訪問看護事業協会の令和7年度調査によると、訪問看護ステーションの稼働数は18,743件(2025年4月1日時点)。前年から1,414件増(前年比108%)で、2012年の診療報酬・介護報酬の同時改定以降、年平均8.8%のペースで増え続け、この13年で約3倍になりました。
働く人も増えています。厚生労働省の令和6年衛生行政報告例では、訪問看護ステーションで働く看護師は91,022人と、就業看護師全体の6.7%に達しました。地域包括ケア——医療や介護が必要になっても住み慣れた場所で暮らし続けられる体制づくり——の中核として、訪問看護の役割は制度面でも位置づけが強まっています。
訪問看護ステーションの稼働数
18,743件
2025年4月1日時点。前年比+1,414件で15年連続増加
訪問看護ステーションで働く看護師
91,022人
就業看護師全体の6.7%(2024年末時点)
求人市場:倍率4.54倍、人材確保が追いつかない
需要の強さは求人統計にもはっきり表れています。日本看護協会のナースセンター集計(2024年度)によると、訪問看護ステーションの求人倍率は4.54倍。看護職全体の2.51倍の2倍近く、施設種類別で最も高い数字です。事業所が増えるペースに、働き手の供給が追いついていません。
採用側の裏返しとして、働き手にとっては選べる市場です。訪問看護は「臨床経験3年程度が目安」とされることが多いものの、近年は教育体制を整えて経験の浅い人やブランクのある人を受け入れるステーションも増えています。夜勤がない代わりにオンコールがある働き方が典型で、生活リズムを整えたい人との相性も良い領域です。
訪問看護ステーションの求人倍率
4.54倍
看護職全体は2.51倍。施設種類別で最高(2024年度)
拡大期の注意点:新規開設も廃止も過去最多
拡大の内訳には注意も必要です。令和7年度調査では、前年度の新規開設が2,487件と過去最高だった一方、廃止も886件、休止も355件といずれも過去最多でした。開設ラッシュの裏で、経営が続かず撤退する事業所も増えている——つまり職場の当たり外れの幅が広がっているのが実情です。
職場として選ぶときは、開設からの年数、利用者数の推移、オンコール体制(回数・手当・翌日の配慮)、教育体制などを面接や見学で確認するのがおすすめです。給与は日本看護協会の実態調査ベースの試算で年494万8,000円と病院よりやや低めですが、訪問件数に応じた手当などで差を縮めやすい構造もあります。数字と現場の両方を見て、長く働けそうな一社を選んでください。
新規開設と廃止・休止(2024年度)
新規2,487件/廃止886件
新規は過去最高、廃止・休止(355件)は過去最多。職場選びの見極めが重要に
訪問看護ステーションの年収(実態調査ベース試算)
494万8,000円
日本看護協会2025年実態調査ベース(月収×14ヶ月換算)
この記事のまとめ
訪問看護ステーションは18,743件と15年連続増、働く看護師は9.1万人。在宅医療シフトを背景に、看護師の就業先として確固たる領域になっている。
求人倍率4.54倍は施設種類別で最高。働き手にとって選べる市場であり、教育体制を整えて未経験・ブランク明けを受け入れる事業所も増えている。
新規開設と廃止がともに過去最多で、職場の質の幅は広がっている。開設年数・利用者数・オンコール体制・教育体制を確認してから決めるのが安心。
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